訪問看護ステーション 地域に根差した「あんしんケア」| は~とふる多摩センター
facebooktwitterrss

★コラム

2025

12/01

そういえば2025年問題について

2025年もあと1か月となりましたが、そういえば「2025年問題」いう言葉があったなぁ…などと思い出します。お聞きになったことはありますか。医療や介護の世界ではしばしば話題となっていました。それこそ、未来の警告のように語られていました。しかし、今や2026年に差し掛かろうという折、私たちはいつの間にかその「問題」の真っ只中にいます。


2025年問題とは何かをおさらいする

定義として、2025年問題とは何かというと、「団塊の世代が75歳以上、つまり後期高齢者となり、社会保障費は増え、医療・介護の現場はかつてないほど負荷を抱えることになる」という社会課題です(でした)。もはや「これからどうなるのか」ではなく、「いま起きている変化をどう受け止めるか」が現実的な問いに変わっています。

課題の範囲は多岐にわたります。後期高齢者医療制度の対象者が急増することで、財政への圧力が強まっているだけではありません。介護現場の人手不足問題が深刻さを増し、入退院の調整やご家族の負担も年々重くなっています。その背景には、単なる高齢化ではなく、社会全体の人口構造の変化があります。現場の肌感覚としても、「もう限界に近い」という言葉に違和感を感じない段階です。

では、増加の一途をたどるご高齢者のために、病院や施設の建物やベッドの数を増やせば解決できるものなのでしょうか。答えは、残念ながら「否」です。

病床を増やすためには医師や看護師をはじめ、リハビリ職、介護スタッフ、薬剤師、相談員など多様な専門職の配置が必要で、これらの人材はおよそ短期間で育成できるものではありません。新しい建物さえ作ればよいという問題ではなく、少子化の波の中で「それを支える層」が圧倒的に足りないのです。


少子化とのダブルパンチ

少子化は、社会全体の人口減少という長期的な課題に直結します。2030年に、我が国の総人口は1億2千万人を下回り、2050年には1億人を割ると予測されています。今後縮小が避けられない社会の中で、巨大な病院や施設を大幅に増設し続けることは、経営上の観点からも現実的ではありません。医療や福祉の現場は「社会事業」であると同時に「持続可能な運営」で成り立っているからです。

こうした状況が続けばどうなるか。すでに指摘され始めているように、2030年には年間47万人もの方が病院でも施設でも最期を迎えられない、いわゆる「看取り難民」になる可能性があります。この数字は衝撃的ですが、決して大げさな予測ではありません。救急搬送の受け入れ先が見つからない、施設の空きが出ない、入院が長引く…すでにその片鱗は日常のあちこちに現れています。

その結果、旅立つ場所は「病院でも施設でもなく、自宅」というケースが現実的な選択肢として、その割合を拡げています。かつては、在宅医療や訪問看護は特別なニーズに応えるものでしたが、今では「社会を成立させるために必要なインフラ」へと役割が変わりつつあります。現在の流れとして、「医療従事者の活動場所」の選択肢も、徐々にその割合が病院から地域・在宅へと移行しはじめています。以前よりも、暮らしの場に直結する医療の在り方が深く論じられています。


私たちに求められる視点

ただ、この変化は決して悲観的な側面ばかりではありません。在宅という場所には、その人が積み重ねてきた暮らしがあり、家族の時間があり、匂いや景色があります。病院の清潔な白い光とは違い、生活の匂いと温度の中で、人が人らしく過ごせる豊かさがあります。在宅に医療、看護が入ることは、単に「病院の代わりをする」ということではなく、「その人の物語の中に入り込む」という、より本質的な営みへと近づくことでもあります。

制度が揺れ、数字が語られる時代だからこそ、私たちは一軒一軒の玄関をノックし、その人の「日常」にそっと入り込む看護の姿勢を守り続けたいと願います。「我が家」という個の空間は繊細で、時に不安を抱え、時に温かく、時に静かです。そのすべてを尊重しながら、その人らしい暮らしが最期まで続いていくよう支える…それが、私たちの役割です。

大きな時代の変わり目にいる今だからこそ、暮らしの場での医療ケアの価値が再び脚光を浴び始めています。急がず、驕らず、誠実に。訪問看護ステーションは~とふる多摩センターは、これからの在宅の時代を、地域の皆さまの仲間に入れていただきながら、共に歩んでまいりたいと願っております。

 

訪問看護ステーションは~とふる多摩センターでは
現在看護師を募集しております
詳しくは下記の採用特設ページにて
求人概要をご確認ください