訪問看護ステーション 地域に根差した「あんしんケア」| はーとふる多摩センター
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★コラム

2025

11/22

ニュータウンで働いていて思うこと

訪問看護ステーションは~とふる多摩センターの主な活動場所は多摩市全域、八王子市東部、日野市南東部、府中市南西部、稲城市西部、町田市北部、川崎市麻生区北部…すなわち、『多摩ニュータウン』エリアとその周辺地域です。

多摩ニュータウンは、およそ半世紀前、高度経済成長とともに増加する都心部の人口の受け皿として山野地帯であった多摩丘陵を切り拓いて造成した一大ベッドタウン計画によってもたらされた街です。

開拓当初は、現在の(京王・小田急)永山駅周辺から開発が始まり、それが今は西側は八王子市南大沢エリア、東側は稲城市若葉台エリアまで拡大しています。  

開発当初のマスタープランでは、ニュータウンを拡大させながら、おおむね 30万人規模で都市計画を策定したいたそうです。第1弾入居者が流入して間もなくは街も大いににぎわいをみせ、その後の計画見直しでさらに大きな想定として40〜45万人人口を検討した時期もあるそうです。しかし、現在の実際の人口(ニュータウン全域)では約220,00人強(2024年10月1日)。計画想定と比べると 現在は計画値を大幅に下回っています。

第一次入居者受け入れ期の当時、多摩ニュータウンに住むことは多くの方々にとって憧れでした。厳しい抽選を経て居住権を手にした方々が、団地エリア特有の箱型(羊羹型)住宅から出勤し、近くの停留所でバスを待つ様子の写真が残っていますが、周辺はまだ更地が広大に広がっていて、今後住宅が増え、公園が作られ、商店街が潤うことに大きな期待が寄せられ、それらは実際に次々と実現されました。

しかし、現在ともなると、その初期入居世代の方々はみな後期高齢者です。箱型住宅の場合、5階建て以下の低層棟にはエレベーターもなく、風呂桶も狭く深い仕様で、足腰の弱った方々には住みづらい環境であることが徐々に痛感されてきました。子ども世代は流出し、空き部屋も増えてきておりますが、そこに入居される方々の多くは同様に高齢者です。都市公団、都営住宅の場合は、保証人無しで入居できるという仕組みがありますので、人口が微増する時もそのメイン層は高齢者となります。若い人口の減少は今後の大前提となっているので、その意味で課題山積のエリアといえます。

まさに多摩ニュータウンは、創成より半世紀と歴史そのものは決して古くありませんが、この国全体の人口比率課題を如実に表しているようにも思えるのです。

訪問看護ステーションは~とふる多摩センターは、今年開業9年目を迎えましたが、この期間でさえ、ニュータウンの変貌の一片を垣間見たような気がいたします。

脚力の課題から階段を使っての外出も自由にままならず、一日中室内でテレビを視て過ごしておられる方々は、社会的交流の機会が大きく制限されます。訪問看護師が身体ケアばかりではなく、ちょっとした話し相手としてもその存在が求められていることを実感しています。

また、非常に残念なことに、いわゆる孤独死案件というものに関係したことも複数回ありました。孤独死はいわゆる介護サービスが連日入るような重症者の場合はむしろ稀で、要支援レベルの方々や介護保険非該当といった、介護サービスがそれほど手厚いというわけではないアクティブシニア層にこそむしろ多いのではないか…私たちの少ない経験から推論するにそう思えるのです。社会交流や見守りの重要性がどれほどまでに大切かが実感されます。

もちろんこの課題は高齢者ばかりにフォーカスされるべきではありません。障碍者の方々、医療的ケア時やその保護者の方々、ありとあらゆる境遇の方々の課題が、この都市問題の枠にあてはめて考察されるべきなのだろうと思います。

暗い話はいくらでもできます。しかし、私たちは訪問看護事業を営む立場として、たとえば高齢者すなわち人生の大先輩方の話をするならば、戦後日本を復興させるべく血の出るような苦労と努力を尽くして、地下資源が乏しい国土において、その勤勉さで経済・産業を発展させてくださった世代の方々…そんな高齢者様の人生の黄昏時は、無条件で等しく輝かしいものであって欲しいというのが私たちの強い願いです。

現在訪問でお訪ねしているエリアの中でも、開発当初からの街区は建物自体もとても古く、人の気配も少なく、そこはかとない寂しさを感じたりもします。しかしそこにもかつては、子どもの笑い声であふれ、それを支える大人の活力がみなぎっていた時期があったはずです。

写真のような大きな棟を見上げると、各フロアの横一列に渡り通路が走り、各世帯の入口の鉄扉が整然と並んでいます。正面から見るとその様子は圧巻です。そして、今はだいぶ静かなその鉄扉の向こう側には、それぞれの世帯独自のストーリーがあるはずです。人々は大きな期待を寄せてこの地に住まい、子を産み、育て、彼女ら彼らは巣立ち、残された親世代はそこで老い、静かに亡くなっていく。これは生命の循環であり、人生の摂理です。

ですから、訪問看護としては、それぞれに壮大な歴史が刻まれた一件一件の訪問に心を尽くして、いつでも「今日の訪問が最後かもしれない」「もう二度と会えないかもしれない」という姿勢で臨むことがどれだけ大切なことかを、実際にお元気な方の突然死や転倒から在宅復帰が不可能になったケースが建て続いた最近において、再度痛感しております。

 

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